使用状況
使用場所 | ショッピングセンター |
使用期間 | 2017年8月~2019年11月 (2年4ヵ月) |
環境温度 | 屋内 空調あり |
解析結果
メーカー | 不詳 |
形 | コンパクト形蛍光ランプ36形・55形LED |
状態 | 照度不足・ちらつき・不点灯 |
原因 | ・サージ(突発的な大電流)対策の不備 ・AC入力部が壊れた場合にショートする部品が使用されており危険 ・力率改善回路が無く無効電力が大きい ・放熱性能の不備 ・放熱不足による劣化、出力電圧不足 ・封止樹脂欠損部品あり |
解説
再現実験
それぞれのサンプルの口金にAC100Vを印加したところ,FPL36形は不点灯、FPL55形は ぼんやりとしか点灯しないことがわかりました。
分解検査
1. 電源部分
1-1安全対策が不十分
電源はごく簡単なスイッチング電源回路で構成されており、最低限の機能しかありません。AC入力部分に通常はサージ(突発的な大電流)対策部品があるはずですがそれがなく、落雷などでサージが入った場合はすぐに壊れます。しかもこの近くに壊れるとショートしてしまう部品が使われています。
部品の壊れ方には断線する場合とショートする場合があり、断線の場合には電流が流れなくなり動かなくなるだけですが、ショートの場合は大電流が流れて危険です。ブレーカーが落ちる,ヒューズが飛ぶ,ひいては発火するなどの危険があります。
1-2機能不足
交流電力には実際に負荷(この場合はLEDチップ)で使われる有効電力と負荷で使われない無効電力があり、多くの場合無効電力を打ち消す対策が施されますが、この電源は対策されていません。
無効電力が大きい(力率が悪いと言います)と電力会社は実際に使われるより大きな電力を押し出さなければならず、設備側の負担が増えるため力率に応じた電気料金設定をしています。この照明器具を大量に使用すると余計な電気料金を支払うことになります。
1-3 出力電圧不足
使用されているLEDチップの個数からFPL36形はDC57V程度,FPL55形はDC72V程度がLEDチップに電圧が流れるべきですが、それぞれ28V,60Vしか出ていませんでした。電圧不足で不点灯および照度不足になったと考えられます。電源基板からの出力線が熱で黒く変色しており、発熱による電子回路の劣化が原因です。
2. LEDチップ部分
LEDチップはかなり発熱量が多いため、アルミの放熱板に熱を逃がす必要があります。LED照明の寿命は、熱の放出によって、LEDチップがいかに熱を逃がすことが出来るかで長寿命にも短寿命にもなります。
放熱板とLEDチップを載せている基板は放熱グリースを広範囲に渡って密着させることで、アルミの広い面積に多くの熱を逃がすことが出来ます。また、熱を逃がす為に多くの面積を密着させる必要がありますが、FPL36形とFPL55形いずれも放熱グリースがほとんど塗られておらず、放熱がほとんどされていないのが下の写真からご覧いただけます。
その為、熱が逃げていないのでLEDチップがかなり劣化していることが確認できました。下図はLEDチップ内部の拡大写真です。
左のLEDチップはオレンジ色のチップの周辺が黄色で、正常な使い方が出来ている状況です。右のLEDチップは熱の影響で黒く変色しています。
さらに、今回の故障とは直接の関係はないと思われますが、LEDチップの封止樹脂が一部欠けているものが使用されていました。最初から欠けていたか、製造段階で欠けたかは不明ですが、工場から出荷される前に製造過程においての部材の検査ではじかれるべきNGの製品と考えられます。
まとめ
不点灯、照度不足の原因は発熱による劣化によるものと考えられます。
LEDチップの放熱が不十分なためLEDチップが劣化し、異常電流が流れた際に電源部の劣化につながったと考えられます。
製品と設置環境における突発的な原因が理由で壊れたのではなく、LED照明を製造する際に製造自体が雑なため(放熱グリースを十分に塗っていない、部材の選定がしっかりされていないなど)に発熱による故障と考えられるため、今後もこの製品に関しては同様の故障が発生していくことが予想されます。
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